2010年 12月 21日
砂漠の夜 |
エルゴレアから次の町インサラーまでは400㎞という長丁場である。
雨に降られることはなくなったが、今度は砂嵐に悩まされた。
ひどい時は前方がまったく見えなくなり、口の中には砂がどんどん飛び込んでくる。おちおち食事をとることもできなかった。
まあ雨に降られるよりは、砂漠を旅しているという実感はわくけれど……。
行程の半分、およそ200㎞を進む頃には砂嵐がおさまり、ようやく落ち着いて歩くことができるようになった。
二人の一日のスケジュールと言えば、日の出前の暗いうちに起きて、ミルクを作る。
朝は寒いので羽毛服のポケットにダーツ(ナツメヤシの実)を入れて、手を温めながら食べる。
外が薄明るくなると、テントをたたみ、準備体操をして出発する。
午前9時頃になると、まるで春のようなさわやかな気温になるので、少し落ち着いて硬くなったフランスパンを食べる。
正午にはもはや灼熱無風の地獄となり、リヤカーのかげで1時間ほど休憩する。
15時にオレンジを一つづつ食べ、18時頃キャンプ地を決める。
夕食は毎日スパゲッティかマカロニで、それを食べる頃には再び暑さが去り、心地よい夕べに変わっている。
夕食後はすぐに寝ることが多かったが、満月と新月の夜だけは特別だった。
満月の夜は夕食後、東の空が盛り上がるように赤銅色に染まると、そこから言葉で表現できないほど感動的な丸い月が現れる。
月はすぐに青白く変わり、まるで大地を征服するかのようにあたり一面を皓皓と照らし出す。
すべてが金縛りにあったように不動で、沈黙していた。
それはどこか異星の光景を見ているかのようだった。
いま眺めているこの風景の中に、「ここが別の惑星ではなく地球である」、ということを証明するものは何かあるだろうか?
吉川はふと考えた。
新月の夜はその逆で、なじみ深い数々の星座が、ここは地球であるということを証明してくれていた。
やわらかな光が大地にやっと届けられ、二人は丸い大地と丸い夜空の二つの円盤にはさまれる。
そこには音というものが存在しなかった。
雨に降られることはなくなったが、今度は砂嵐に悩まされた。
ひどい時は前方がまったく見えなくなり、口の中には砂がどんどん飛び込んでくる。おちおち食事をとることもできなかった。
まあ雨に降られるよりは、砂漠を旅しているという実感はわくけれど……。
行程の半分、およそ200㎞を進む頃には砂嵐がおさまり、ようやく落ち着いて歩くことができるようになった。
二人の一日のスケジュールと言えば、日の出前の暗いうちに起きて、ミルクを作る。
朝は寒いので羽毛服のポケットにダーツ(ナツメヤシの実)を入れて、手を温めながら食べる。
外が薄明るくなると、テントをたたみ、準備体操をして出発する。
午前9時頃になると、まるで春のようなさわやかな気温になるので、少し落ち着いて硬くなったフランスパンを食べる。
正午にはもはや灼熱無風の地獄となり、リヤカーのかげで1時間ほど休憩する。
15時にオレンジを一つづつ食べ、18時頃キャンプ地を決める。
夕食は毎日スパゲッティかマカロニで、それを食べる頃には再び暑さが去り、心地よい夕べに変わっている。
夕食後はすぐに寝ることが多かったが、満月と新月の夜だけは特別だった。
満月の夜は夕食後、東の空が盛り上がるように赤銅色に染まると、そこから言葉で表現できないほど感動的な丸い月が現れる。
月はすぐに青白く変わり、まるで大地を征服するかのようにあたり一面を皓皓と照らし出す。
すべてが金縛りにあったように不動で、沈黙していた。
それはどこか異星の光景を見ているかのようだった。
いま眺めているこの風景の中に、「ここが別の惑星ではなく地球である」、ということを証明するものは何かあるだろうか?
吉川はふと考えた。
新月の夜はその逆で、なじみ深い数々の星座が、ここは地球であるということを証明してくれていた。
やわらかな光が大地にやっと届けられ、二人は丸い大地と丸い夜空の二つの円盤にはさまれる。
そこには音というものが存在しなかった。
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by antarctic-walk
| 2010-12-21 18:34
| 吉川謙二